研究概要 |
【緒言】DNA中のグアニン塩基が酸化損傷を受け、8位の炭素が酸化されることによって8-hydroxy-2'-deoxyguanosine(8-OHdG)が生成される。拡張型心筋症(DCM)患者の血清及び心筋内において8-OHdGが高値を示すと考え、これを測定した。さらに抗酸化作用をもつβ blockerであるcarvedilolを投与することで、8-OHdG濃度の低下が認められるか否かを検討した。 【方法】対象:βプロッカー未導入の拡張型心筋症56症例を対象とした。血清8OHdG濃度:enzyme-linked immunosorbent assayキットを使用した。免疫組織染色:マウスモノクローナル抗8OHdG抗体を用いた。 【結果】血清8OHdG濃度 対照群と比較し、DCM患者では血清8-OHdG濃度は有意に高値を示した(P=0.0018)。免疫組織染色 DCM患者の心筋核内に8-OHdGを認めたが、対照群では認められなかった。carvedilolによる治療前後の比較 carvedilol開始後、心拍数、NYHA class、LVDd、LVEFのいずれも有意差をもって改善した。血清8-OHdG濃度は19%低下した(P<0.05)。 【結論】DCM患者の血清及び心筋において、酸化ストレスによるDNA損傷を示すマーカーが上昇していた。carvedilolによって心不全が改善されるとともに、酸化ストレスによるDNA損傷も軽減された。 本研究は米国心臓学会にて発表し(1)、Circulation Journal誌に掲載された(2)。 (1)Nakamura K, Kono Y, et al. Circulation 2006;114:II-801 (2)Kono Y, Nakamura K., et al. Circ J.2006;70:1001-5.
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