研究概要 |
1.p62(A170)欠失皮膚線維芽細胞,および患者皮膚線維芽細胞を用いた細胞レベルでの研究. 異常Httを培養細胞に導入するとp62(A170)発現量を増加させることを明らかにし,Httの細胞内処理にp62(A170)が要求されることが示唆された.この結果をもとに,p62(A170)欠失皮膚線維芽細胞および正常細胞に,GFP付加異常Htt, GFP付加正常Httを発現させ,凝集体の形成過程の検討,p62(A170),ユビキチン等の免疫染色,各種酵素活性を測定した. 患者由来細胞ではプロテアソーム活性が低下していること,カテプシン活性が上昇していることを確認した.また,遺伝子導入細胞と同様の細胞内構造物が患者由来の線維芽細胞でも認められた.現在,患者皮膚線維芽細胞検体数を追加し,多数例での検討を施行中である. 2.p62(A170)の発現誘導システムの検討 パーキンソン病治療薬であるdeprenylが,ヒト細胞においてPI3K-Nrf2システムを介してp62(A170)の発現量を増加させることを確認した.このシステムはp62(A170)の発現量増加のみならず,種々の抗酸化蛋白群の発現量を増加させることも見い出し,ハンチントン病(HD)など神経変性疾患に対しての有望な細胞保護システムと考えられた.これに関してはすでに論文発表した.現在,Nrf2過剰発現細胞を構築し,異常Httによる細胞毒性に対し抵抗性を示すことを証明する実験が進行中である. 3.p62(A170)KOマウスとHDモデルマウスの交配による,臓器レベル,個体レベルでの研究. 上記2種のマウスの交配により,p62(A170)を欠失し,かつ異常Httを有するモデルマウスが生誕する.現在,2種のマウスの交配に成功し,目的とするマウスがすでに生誕形態学(電顕を含む),免疫組織化学による検討を行っている.個体レベルの現象として歩行異常などの神経症状,寿命の長短も検討中であるが,少数個体での検討では,優位な差を認めていない.現在,凝集体の構成成分に関して,ユビキチンプロテアソーム系,リソソーム系関連分子を中心に検討を進めている.
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