研究概要 |
β_2-glycoprotein I(β_2-GPI)は様々な生理活性を持つリン脂質結合性糖蛋白であり,C末端に疎水性のループ構造を持つが,プラスミンの作用で疎水性ループが切断され,リン脂質結合活性を失う一方でプラスミンに対する結合能を獲得する(ニックβ_2-GPI).今回我々は,生体内でプラスミノゲンがプロセシングを受けて発生し,血管新生抑制作用を有するangiostatin(AS)とニックβ_2-GPIとの相互作用について検討した. β_2-GPIをプラスミン処理後にヘパリンカラムおよび抗β_2-GPI抗体カラムを用いてニックβ_2-GPIを調整した.ASはプラスミノゲンをプラスミンで処理後,リジンセファロースカラム・セファデックスカラムを用いて精製した.固層化プラスミノゲン対するニックβ_2-GPIの結合はASを液層に加えることによって減弱したことから両者の相互作用が示唆されたので,optical biosensorを用いて直接の結合を検討した.キュベットにstreptavidinを介してビオチン化ASを固定し,ニックβ_2-GPIあるいはβ_2-GPIの結合を検討した.結果,β_2-GPIは全く結合を示さなかったが,ニックβ_2-GPIはK_D=0.3x10^<-6>Mと比較的強固な結合を示した. ASが血管内皮細胞の遊走を阻害する事を,HUVECが細胞外器質に類似したMatrigel内を遊走するmigration assayを用いて評価した.結果,ASは濃度依存性にHUVECの遊走を阻害することが確認された.HUVECの遊走が80%となるAS 2.5ug/mlを添加した系において,この系にインタクトβ_2-GPIあるいはニックβ_2-GPIを加えることで,ニックβ_2-GPIのAS存在下における血管内皮細胞の遊走に及ぼす影響を評価した.10ug/mlのニックβ_2-GPIは,ASによって抑制された遊走能を100%まで回復したが,同濃度のインタクトβ_2-GPIでは82%とASによる遊走能の阻害を回復できなかった.
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