研究課題
β_2-glycoproteinI(β_2GPI)は血漿中に高濃度存在し、凝固・線溶系や脂質代謝に関する様々な生理活性を持つリン脂質結合蛋白である。β_2GPIは、プラスミンにより限定分解を受け、β_2GPIのリン脂質結合性が失われる(ニックβ_2GPI)。ニックβ_2GPIはプラスミノゲンに結合し、その活性を抑制することが明らかとなっている。我々はプラスミノゲンから生体内でプロセスをうけて生ずる血管新生抑制物質であるアンジオスタチン(AG)に注目し、ニックβ_2GPIがAGとの相互作用を通して血管新生に与える影響を明らかにすることを目的とした。BIACOREによる両者の結合試験を行った結果、インタクトβ_2GPIはAGとの結合を示さなかったのに対し、ニックβ_2GPIは解離定数3.05×10^<-7>で比較的強固な結合を示した。次にMatrigel Invasion chamberを用い、AG1-5とニックβ_2GPIおよびβ_2GPIの添加時のHUVEC遊走を比較した結果、AGはHUVECの遊走を阻害するが、これにニックβ_2GPIを共に添加したものでは有為に遊走細胞の増加が見られた。細胞増殖における作用においても、AGはHUVECの増殖を阻害するが、ニックβ_2GPIを加えることでAGの作用が有為に抑制された。実際の血管形成を見るTube Formation Assayでは、AGを添加したものでは管腔形成の阻害が明らかであった。ニックβ_2GPIのみの添加ではコントロールとほぼ同程度の管腔形成が見られたが、AGとニックβ_2GPIを共に添加したものではニックβ_2GPI濃度依存的に管腔の面積の拡大が認められた。血管新生抑制効果を持つAGにニックβ_2GPIが結合することによって、その血管新生抑制作用を阻害し、結果的にAGが存在する環境では血管新生に働くことが考えられた。つまり、血栓部位で線溶系が活性化したとき、側副血行路の形成を促す作用を持つと考えられた。
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