研究課題
我々の社会は高齢化社会を迎えている。80歳以上の5人に1人は認知症(痴呆)を発症すると報告されている。認知症の約半分はアルツハイマー病である。アルツハイマー病は脳に老人班が蓄積する重篤な疾患である。現在、治療法としては抗コリンエステラーゼ阻害薬があるが進行を半年遅れさせる程度の効果である。老人班に蓄積しているAβを用いたワクチン療法が臨床研究中であったが、髄膜脳炎が10人に1人発症してしまった。そこでアルツハイマー病に対する画期的治療法とは何か、検討を行った。我々は肝細胞増殖因子(HGF)遺伝子治療に注目することにした。なぜならば、HGF遺伝子治療は閉塞性動脈硬化症に対して臨床研究が行われていること、HGFは神経細胞に保護的に働くこと、HGFは血管新生促進作用を持つからである。アルツハイマー病マウスモデルとしてAβを脳室内に注入する記憶障害モデルを用いた。行動試験として、短期記憶をみるY-MAZE、長期記憶をみるWATER FINDING TASKを用いた。遺伝子導入にはマイクロバブルを使用した超音波遺伝子導入法を用いた。HGF遺伝子導入した群ではコントロール群に比し、短期記憶、長期記憶ともに改善していた。そのメカニズムを現在、シナプスマーカーsynaptophysin、cdc42、グリアマーカーであるGFAPを用いて解析中である。さらにAPP X PS1ダブルトランスジェニックマウスを用いて長期的な治療効果を検討していく予定である。
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Current Neurovascular Research. 2・3
ページ: 235-247
Neuobiology of Disease. (in press)
J.Gene Med (in press)