研究課題
アルツハイマー病(AD)に対するHGF遺伝子治療の可能性を検討している。ADに対して米国ではNGFを用いた遺伝子治療が臨床試験中である。ADについて神経細胞の減少のみならずアミロイド・アンギオパシーをはじめとする血管系の異常も最近注目されている。HGF遺伝子治療は閉塞性動脈硬化症に対して現在、日本において臨床試験中である。HGFは血管新生作用だけでなくneurotrophicな機能も併せ持つ。そこでADの原因と目されているAβを脳室内に注入するモデル(以下Aβ injection model)を用いてHGF遺伝子治療の可能性を検討した。遺伝子導入にはマイクロバブルを使用した超音波遺伝子導入法を用いた。行動試験として、短期記憶をみるY-MAZE、長期記憶をみるWATER FINDING TASKを用いた。HGF遺伝子を導入した群ではコントロール群に比し、短期記憶、長期記憶ともに改善していた。そのメカニズムを多角的に解析した。まず、中枢神経系で代表的な神経成長因子であるBDNFに注目したところ、HGF遺伝子投与によりBDNFの上昇が観察された。さらにHGFは血管新生を誘導することが知られている為、FITCアルブミンにより血管床を検討したところHGF遺伝子投与により海馬における血管床が増加していることが観察された。ADでは酸化ストレスが増大していることが知られている。そこで酸化ストレスを検討したところ、HGF遺伝子投与により酸化ストレスが軽減していた。さらにBDNF遺伝子導入群とHGF遺伝子導入群で認知機能障害に対する効果を検討したところ、長期記憶の改善の程度は同様であったが短期記憶の改善度はHGF遺伝子導入群で上回っていた。以上のことからAI)に対するHGF遺伝子治療の有効性が示唆された。
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Geriatrics and Gerontology International in press