双極性障害の病態に関与している可能性のある小胞体ストレス応答の異常が神経細胞においてAMPA型グルタミン酸受容体の輸送異常を引き起こすかどうかについての検討を行っている。まずAMPA型グルタミン酸受容体と共沈することが知られている小胞体ストレス関連遺伝子であるGRP78についてケースコントロールスタディーを行うことにより小胞体ストレス応答と双極性障害についての検討を行った。その結果、日本人サンプル及びNIMHトリオサンプルにおいて機能的ハプロタイプが疾患と関連している可能性を見出した。また予備的な検討から示されたXBP1とWFS1の関係を調べたところ、WFS1遺伝子プロモーター領域にXBP1による制御を受けるEndoplasmic reticulum stress response element様のモチーフ(CGAGGCGCACCGTGATTGG)が存在することを見出し、WFS1が小胞体ストレス関連遺伝子であることをさらに示す結果を得た。WFS1は高率に気分障害などの精神疾患を合併する遺伝性疾患であるWolfram病の原因遺伝子として知られており、精神疾患解明の手がかりとなる可能性が期待されているものである。現在AMPA型グルタミン酸受容体輸送変化と行動変化の対応について検討するため、XBP1及びWFS1ノックアウトマウスの行動解析を行っている。また、WFS1ノックアウトにおけるAMPA型グルタミン酸受容体の免疫組織学的検討を脳組織切片及び初代培養神経細胞を用いて試みている。
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