1.小口径血管再生のための新しい担体の開発: Electrospinning法で作製したナノファイバーを用い、全く新しい層状構造を呈した小口径血管再生用の担体を開発した。これらの細胞親和性を組織標本にて評価した。ナノファイバーはポリ乳酸とポリカプロラクトンの共重合体で作製し、内・外層にイオナイザー処理を施し、3層とした。細胞侵入性の良好な気孔率と繊維密度を見いだし、これらは知財として特許出願準備中である。 2.バイオリアクターの開発: 血管組織の再生に動的環境(拍動性の機械刺激)が有効な事はこれまでに示されてきたが、我々は、生理的なストレス(圧、流量、圧波形)が有効なことを見いだした。しかしながら、細胞を播種した担体に最初から生理的ストレスを加える細胞の定着は阻害されるため、徐々に圧・流量を増加させる方が有効であった。細胞は配向性を示し、細胞数、細胞外マトリクス、蛋白発現が増加した。 3.体制幹細胞から血管構成細胞への分化誘導法の開発 (1)血管内皮前駆細胞:イヌおよびヒト末梢血から単核球成分を分離しコラーゲン・コーティングシャーレと特殊成長因子含有の培地で培養し、内皮細胞特異的マーカー(Factor VIII、アセチルLDL、eNOS、DAF-2DA、Flk-1、CD31など)を発現する細胞を見いだした。 (2)血管平滑筋前駆細胞:イヌおよびヒト骨髄間様系幹細胞あるいは骨髄間質細胞から、TGF-β1_やアスコルビン酸を添加した培地で、平滑筋細胞特異的マーカー(a-アクチン、カルポニン、カルデスモン、ミオシン重鎖、デスミンなど)を発現することを見いだし、この特殊培地は有意にこれらのマーカーの遺伝子発現が増加することを見いだした。また、これらの細胞は一定条件下で骨分化しないこともわかった。 4.その他 名古屋大学工学部の研究協力により、磁性ナノ粒子を用い血管用層状細胞立構築法を開発した。
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