1.小口径血管再生のための新しい担体の開発: Electrospinning法で作製したナノファイバーを用い、層状構造を呈した小口径血管再生用の担体を開発した。in vitro試験(細胞親和性、引張強度、SEM所見、気孔率など)で担体の評価を行い、特許出願した。また、動物移植試験を行い、低圧系(肺動脈パッチ)で良好な結果を得たが、高圧系(頸動脈移植)では瘤状変性した。瘤化した原因の一つとして中膜平滑筋層の欠如が考えられた。 2.体制幹細胞から血管構成細胞への分化誘導法の開発(特に骨髄由来間葉系幹細胞の平滑筋細胞への分化誘導法) A.サイトカイン・成長因子を用いた誘導法 骨髄間葉系幹細胞から平滑筋細胞への分化に、TGF-b1、アスコルビン酸の両者を添加することによって相乗的に平滑筋特異的蛋白や遺伝子の発現が亢進した。PDGF-BBの添加では有意にこれらは低下した。現在、レチノイン酸、インスリン様成長因子の効果も検討している。 B.細胞外マトリクスの影響 様々な細胞外マトリクス(ラミニン、コラーゲンtype IV、フィブロネクチン、なし)上で骨髄間葉系幹細胞を培養し、平滑筋細胞特異的蛋白や遺伝子の発現を比較した。ラミニン上で培養した時が最も平滑筋特異的蛋白が遺伝子の発現が亢進した。インテグリンの関与が示唆された。 C.メカニカルストレスの影響(バイオリアクターによる生理的ストレスと脱細胞化マトリクスを用いた研究) 脱細胞化マトリクス(ブタ頸動脈)上に、磁性ナノ粒子を用いた層状細胞立体構築法で、骨髄間葉系幹細胞を層状に形成し、生理的ストレス環境下で培養したところ、平滑筋細胞特異的蛋白や遺伝子の発現が亢進した。
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