研究概要 |
限局性大脳皮質異形成(T-FCD)の病理発生機序を明らかにするため,各種物質の発現を組織マイクロアレイを用いて免疫組織化学的に結節性硬化症皮質結節(TSC-tuber)と比較検討した. 【対象】 A群:TSC-tuber(8例)B群:T-FCD(22例)C群:その他のFCD(9例)D群:病変のない大脳皮質(24例)E群:病変に隣接する比較的正常の大脳皮質(12例) 【実験】 1:インスリンシグナル伝達系関連物質 2:MAPキナーゼカスケード関連物質 3:細胞増殖能 4:TSC遺伝子産物と各種細胞骨格蛋白の発現 【結果・考察】 1:T-FCDにおけるS6とeIF4Gの恒常的活性化はTSC-tuberと同様で,その陽性率(%)に統計学的有意差は認められなかった.p70S6Kの発現はTSC-tuberに特異的であり,その他の疾患群では認められなかった. 2:p38MAPKの発現がTSC-tuberとT-FCDの異形成性神経細胞の胞体に認められ,その陽性率(%)に明らかな差は認められなかった. 3:異形成性神経細胞やballoon cellはKi-67陰性であった. 4:tuberinは正常錘体神経細胞の胞体に,hamartinは軸索にのみ陽性であるのに対し,TSC-tuberとT-FCDでは両者の発現が異形成性神経細胞とballoon cellにも認められた.このことは,これらの異常細胞における遺伝子異常によるtuberin/hamartin複合体の機能不全とこれに対する二次的産生亢進を示唆する.また同時にT-FCDでも個々の細胞レベルで遺伝子異常によらないtuberin/hamartin複合体の機能不全が存在することも示唆する. 5:GFAPとneurofilamentの発現様式の違いにより少なくとも3種類のballoon cellが認められた.現在,balloon cell各成分の比率(%)を検討中である.
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