研究概要 |
限局性大脳皮質異形成(T-FCD)の病理発生機序を明らかにするため,各種物質の発現について組織マイクロアレイを用いて免疫組織化学的に結節性硬化症皮質結節(TSC-tuber)と比較検討した. 【対象】A群:TSC-tuber(8例)B群:T-FCD(22例)C群:その他のFCD(9例)D群:病変のない大脳皮質(24例)E群:病変に隣接する比較的正常の大脳皮質(12例) 【実験】 1:GFAPと非リン酸化neurofilament(NF)の発現様式の違いによるballoon cell(BC)の構成比率 2:Na+/K+-ATPase beta subunit 2(adhesion molecule on glia : AMOG)の発現 3:脱リン酸化酵素(PTENとリン酸化PPlalpha) 【結果・考察】 1:3種類のBCの構成比率(%)は各症例でばらつきが大きく,T-FCDとTSC-tuberとの間に明らかな差違は認められなかった.従ってBCの発生由来時期や分化の程度はT-FCDとTSC-tuberを病理組織学的に区別する指標にはならないことが示唆された.一方,異形成性神経細胞におけるリン酸化NFの発現率はTSC-tuberで有意に高く,診断価値の高い指標と考えられた. 2:AMOGの免疫反応は主として反応性アストロサイトとBCの胞体に認められ,多くは胞体にびまん性陽性,一部のBCでは胞体の辺縁部に陽性だった.このことはBCのグリア細胞としての一つの性質を示すとともに,AMOGを介した細胞大型化の機序の存在をも示唆する. 3:PTENの免疫反応は一部の異形成性神経細胞とBCの胞体に認められたが,T-FCDとTSC-tuberとの間で陽性細胞数(%)に明らかな差違は認められなかった.リン酸化PP1alphaの発現はいずれの疾患群でも認められなかった. 以上の結果をふまえ,今後はBCにおける水チャンネル分子の発現や乏突起膠細胞への分化傾向を評価する予定である.
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