研究概要 |
エナメル芽細胞の分化、成熟、維持機構に関わる遺伝子群を同定するために、まず指標となるアメロゲニン遺伝子(AG)の発現調節機構を検討する系を確立した。即ちマウスAGのプロモーター領域を単離し、ルシフェラーゼ解析用ベクターに組み込んだ。これを既に樹立している正常ラット(WT)由来のエナメル芽細胞株(SRE)とエナメル質形成不全ラット(AMI)由来のエナメル芽細胞株(ARE)に導入し、転写活性調節に重要なプロモーター領域を検討した。その結果、-70bpまでの領域と-206から-1634bp,-1634から-2180bpまでの領域にAGの転写を促進する領域があることが示唆された。さらにHeLa細胞にて同様の解析を行った結果、-1634から-2180bpまでの領域にエナメル芽細胞特異的な転写調節領域が存在する可能性が示唆された。この領域にはPhoxやE-box結合領域が存在している(in silico data)。現在この領域に結合する転写因子を同定するためにゲルシフト解析を行っており、さらに結合する転写因子を同定するための実験系の確立を試みている。また、ARE細胞はAGの転写活性化能を持つことが判明した。しかしAMIの表現型はエナメル質形成不全であることからエナメル芽細胞の成熟、維持機構に関与するアメロゲニン以外の遺伝子群をマイクロアレイにて網羅的に検索した。生後6日目のWTおよびAMIの臼歯から全RNAを抽出し、アジレント社のマイクロアレイ(20500遺伝子搭載)を用いて解析した。その結果、WTで2倍以上発現の高い遺伝子は100個、AMIでは141個であった。変動のあった遺伝子群は既存の報告では間葉系に発現が認められているものが多いことから、実際の発現部位を同定しエナメル芽細胞の成熟、維持機構との関連を検討していく必要性が示唆された。
|