エナメル芽細胞の分化・成熟・維持機構に関わる遣伝子群を同定し、その機能を解明する目的で、エナメル質形成不全症ラットの原因遺伝子探索を行った結果、遣伝子Xを見出した。そこで遺伝子Xの発現制御機構と、エナメル芽細胞分化におけるXタンパク質の機能を解析中である。 まずX遺伝子の歯特異的発現機構を解明するため、5'RACE法にて転写開始点を同定した。転写開始点は5kb離れて2カ所存在し、ラットとマウス双方で保存されていた。そこで転写活性化領域を同定するため、マウスX遣伝子のプロモーターをクローニングし、現在レポーターベクターにて詳細な発現調節領域を解析中である。またX遣伝子は転写因子群に属すため、昨年度報告した標的遺伝子候補であるフォリスタチン遺伝子を用いて転写活性を詳細に検討し、-313までのプロモータ領域にXタンパク質による抑制ドメインがあることを見出した。次いで野生型のX遺伝子過剰発現細胞を用いたEMSA解析により、Xタンパク質発現に伴う特異的結合の存在を確認した。現在、EMSA法およびChIP法にてDNA結合能の有無とその認識配列を検討中である。さらにX遺伝子過剰発現細胞を用いたマイクロアレイの結果から、細胞内でのMAPKのリン酸化/脱リン酸化による調節機構や酸化ストレス応答などもエナメル芽細胞の分化において重要な意義を持つことを見出し、現在詳細に検討中である。またエナメル芽細胞分化でのX遺伝子の機能を調べるため、歯原性上皮細胞株SRE-G5での遺伝子ノックぼダウンをSiRNAにて行い、マイクロアレイで同定した標的遺伝子の発現動態への影響を確認した。現在器官培養の系へのSiRNAの応用を試みている。 エナメル質形成不全症においてX遺伝子変異を発見し、その標的遺伝子を同定した本研究の成果は、今後のエナメル芽細胞分化の研究のみならず、歯牙再生の研究に大きく貢献すると考えられる。
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