研究概要 |
本年度は、高額な備品(マイクロダイセクション装置)の購入が必要であり、消耗品費の確保が十分にできないため、従来の研究を推進するとともに、本格的な新たな研究を行うための準備を行った。 (1)現在まで収集し、臨床的・病理組織学的情報が整備されている口腔扁平上皮癌症例のFISHによるゲノム解析を進め、cyclin D1(11q13)遺伝子の数的異常が後発頸部リンパ節転移の予測に有用であることをみいだした。この結果については、Cancer 104;2709-2716(2005)に報告した。 (2)さらに、FISHを用いて同一口腔癌検体におけるcyclin D1(11q13)とp16(9q21)両遺伝子の数的異常を解析し、両遺伝子を解析する方が、悪性度診断にはより有用であることをみいだした。この結果については、17th International Conference on Oral and Maxillofacial Surgery, Vienna, Austrianにて発表した。 (3)舌扁平上皮癌における後発頸部リンパ節転移様式について調査し、転移リンパ節に被膜外浸潤が生じている症例については、遠隔転移が生じやすく、レベルIIに転移が生じた症例では頸部非制御となりやすいことがわかった。以上の内容を頭頸部癌31(4);530-535(2005)に報告した。 (4)ライカ社製のマイクロダイセクション装置を購入し、舌癌および白板症などの前癌病変の検体の採取方法の検討を行うと共に、正常歯肉を用いて、迅速凍結病理標本からの目的部位のマイクロダイセクション、RNA, DNA抽出、Real time PCRの条件設定等セットアップを行った。
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