研究概要 |
近年,単一の重要な癌遺伝子を分子標的にするのみで癌細胞の分化およびアポトーシス誘導が観察され、癌遺伝子への依存が癌のアキレス腱となることが示された。本研究では、Applied Biosystems社製の全遺伝子対応型マイクロアレイを用いて口腔癌においてアキレス腱となる癌遺伝子を同定することを目的とした。口腔癌10症例原発腫瘍組織および培養ヒト口腔癌細胞10株を用いてマイクロアレイ解析を行った。全ての口腔癌組織および細胞株において共通して発現し、口腔正常組織および細胞株こおいてその発現が認められない遺伝子として唯一Akt1を同定した。Akt1蛋白質の発現について免疫組織化学染色、Western blotting、ELISA法を用いて検討したところ、ほぼ全ての癌組織と全ての癌細胞株においてAkt1の発現を確認した。つづいて、口腔癌細胞におけるAkt1の機能を明らかにするためにAkt1に対する合成small interfering RNA(siAkt1)を8種類設計、合成した。siAkt1は口腔癌細胞の浸潤増殖を著明に抑制し、さらにアテロコラーゲンを用いた(siAkt1)の局所および全身投与ではヌードマウス背部皮下腫瘍の増殖も著明に抑制された。また、合成siRNA/アテロコラーゲン複合体静脈内投与の生体(マウス)に対する安全性を肉眼的および病理組織学的検索こよって確認した。以上の結果より、siAkt1/アテロコラーゲン複合体は口腔癌に対する新規治療薬として応用できる可能性が示唆された。
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