研究概要 |
本研究は,計算機科学分野において数十年来の難問とされている,論理関数の複雑さの下限を導出する手法の開発を目指したものである.本研究により得られた結果は以下の通りである. 1.順序付決定二分木と呼ばれる論理関数の表現手法において,基本的演算である乗算を表する際に必要となるサイズに関して,従来知られるものより,優れた上界を得た.また,計算機実験によって,この上限が最適であることを強く示唆する結果を得た. 2.論理関数を論理回路で表現する際のサイズについて,2次形式と呼ばれる性質を満たす論理関数に対する単調論理回路モデルを用いたケースに関して検討を行った.この結果,この種の関数を計算する回路サイズと回路構造に関するいくつかの知見が得られた.また,ある種の構造を持つ回路において表現サイズが大きくなるような関数を特徴付ける,幾つかの組み合わせ論的性質を明らかにした. 3.否定素子の使用個数を限定した論理回路モデルにおいて,入力にある種の制限を設けた場合のソーティングあるいは,反転回路のサイズに関する検討を行った.その結果,2値入力を先頭から読んだ場合の値の反転数が十分小さな場合には,否定素子の個数を小さな数に抑えても,線形サイズでこれを実現する回路が構成可能であると結果などを得た. 加えて,論理式モデルにおける表現サイズを半正定置計画問題に帰着する手法に対する詳細な解析や,ある種の木構造をもつ表現形式における最適な情報伝達経路の構成法に関する成果等も得られた.
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