研究概要 |
本研究は、Tree Adjoining Grammar(TAG)に代表されるような木構造を生成する木文法に注目し、弱文脈依存に属する形式文法の性質を解明すると共に高速な認識アルゴリズムの開発を行うことを目的としている。 今年度は、木構造の認識アルゴリズムの開発を主に行った。特に、TAGと同じ文字列言語のクラスを生成するSpine GrammarおよびLinear, Monadic Context-Free Tree Grammarに注目し、これらの文法が生成する木構造を高速に認識するアルゴリズムの開発を行った。本研究で開発されたアルゴリズムが正しく動作すること、および、アルゴリズムの動作時間は入力の長さに対する多項式時間であることの数学的な証明も行っている。次年度は、開発したアルゴリズムを計算機上に実装し、Web上に公開されているデータを利用して実験を行うことを計画している。 また、今年度は本研究の最初の年であるため、情報の収集を最も重要な作業の一つと位置づけている。これまでに発表された論文を整理し、それらの相互の関連性をまとめる作業を行っている。海外の研究者らとの意見交換も積極的に行うように勤めており、ローザンヌ工科大学のSebastian Maneth先生から今後の研究の方向性を考える上での大変貴重な意見をもらうことができた。 応用として、木構造の認識アルゴリズムを利用し、適応型コンピュータ・テスト・システムの開発も行っている。今年度は、webブラウザ上にテスト問題を表示し、受験者の特性に応じて最も適した問題を出題するシステムの試作を行った。適応型のテストを行うことにより、従来のテストの半分程度の出題数で同程度の精度のテストを行うことが期待されている。次年度は、被験者を集め、実験を行うことを計画している。
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