本研究は、Tree Adjoining Grammar(TAG)に代表されるような木構造を生成する木文法に注目し、弱文脈依存に属する形式文法の性質を解明すると共に高速な認識アルゴリズムの開発を行うことを目的としている。特に、TAGと同じ文字列言語のクラスを生成するSpine GrammarおよびLinear Monadic context-Free Tree Grammar(LM-CFTG)に注目して、研究を進めている。 本年度は、LM-CFTGの標準型についての研究を行った。任意の文脈自由文法は、それと等価なChomsky標準型及びGreibach標準型な文法に変換可能であることが証明されている。そして、その性質は、文脈自由文法の高速な認識アルゴリズムの開発に大いに役立っている。本研究では、LM-CFTGについても、Chomsky標準型及びGreibach標準型の定義を行い、任意のLM-CFTGが、それと等価なそれぞれの標準型に変換可能であることを証明することができた。 また、前年度に引き続き、木構造の認識アルゴリズムの開発も行っている。前年度までに、LM-CFTGの生成する木構造を入力の大きさの4乗のオーダー時間で認識するアルゴリズムが得られていたが、本年度はこのアルゴリズムを改良し、入力の大きさの3乗のオーダー時間で認識するアルゴリズムを得ることができた。入力の大きさの3乗という数字は、有名なCKYアルゴリズムの時間量と同じであり、理想的なものであると考える。 応用として、木構造の認識アルゴリズムを利用し、適応型コンピュータ・テスト・システムの開発も行っている。本年度は、Adobe社のFlashを利用し、コンピュータ画面上のメモ書き機能やセキュリティ機能を持つシステムの試作を行った。
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