研究課題
情報化社会の大規模化と多様化は、計算機による処理能力の向上と処理対象への柔軟な適応によるところが大きい。これは、コンピュータの処理速度の向上に顕著に見られるハードウェアの進歩に加えて、ソフトウェアのアルゴリズム革新に支えられている。ここに、アルゴリズムの設計と性能保証があらゆる分野の基礎として重視されてきている。アルゴリズムの性能保証には、理論的な性能解析が必要不可欠であるが、アルゴリズム設計と同じく人手で行っており、設計者の職人芸的なセンスに依存するところが大きい。本研究の主題は、アルゴリズムの理論的性能解析に計算機を援用することにある。これにより、定型的作業の負荷を減らし、思考の抽象度を高めることによる生産性の向上が期待できる。本年度は、将来の入力が分からない状況をモデル化したオンライン問題において、計算機援用によるアルゴリズムの性能保証に関する研究を行った。オンライン問題の性能保証の尺度として、将来の入力も含めたすべての入力を知っていると仮定した上での最適な行動(すなわち原理上とり得る最善の行動)にどれぐらい近づけるかを理論的に示す競合比が用いられる。計算機援用により、この競合比の上下限の解析を行った。2ビンのオンラインナップザック問題では、時系列に大きさ1未満のアイテムが与えられる。各アイテムが与えられた時点で、そのアイテムを(1)大きさ1のビンに入れる、または(2)捨てるという行動を選択する。最終的に、1つのビン中についてアイテムの大きさの和を可能な限り最大化するのが目標である。このモデルの競合比は、従来の結果では上限が1.3334下限が1.2808であり、上下限に開きがあった。この上下限の差を縮めるためには、解析に膨大な場合分けが必要となるアルゴリズムを設計しなければならない。本研究では、この問題に対して計算機による競合比の自動解析を行い、上下限が1.3012で一致することを証明した。さらに、アルゴリズム的ゲーム理論の立場から、オークションのアルゴリズムの性能解析に関して検討を行った。
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Proc.5th Hungarian-Japanese Symposium on Discrete Mathematics and Its Applications 5(掲載予定)
Proc.of the 17th Annual International Symposium on Algorithms and Computation, LNCS 4288
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