昨年度基本的な理論及び実装を行った媒介変数を伴うグレブナー基底計算アルゴリズムについて、更なる改良及び海外での発表などを行った。特に国際会議等での招待講演や、海外研究所での共同研究を目的とした滞在などにより、本研究の成果の国際的な認知に成功しつつある。既存のものとは本質的に異なる思想に基づいたものであると同時に、既存のものより多くの場合高速であり、理論や実装が単純である事から既に多くのこの分野の研究者には優れた成果として認められたと本研究代表者は認識している。 それに伴ない本研究の他グループによる分散計算での計算効率向上の試みなどのバリエーション、以前では計算できなかった問題が本研究により計算可能になった事による他分野への応用の試みなども進みつつあり、それに対する部分的なアドバイスも行なっている。なお、これらについてはまだ試験的段階にあるようで、まだ改善の余地はあるものの、本格的に成果が出始めたものではないようである。 本研究自身も実用的という意味で更なる向上を行なっており、現在はそれに対する部分的な成果が出始めたところである。特に媒介変数を伴なうグレブナー基底には実質的に計算可能な標準形が存在しておらず、各々の計算結果の比較などへの困難や、人間の目でそれを読んだ場合の読みにくさなどの問題が存在しているが、本研究代表者はそれに対する打開案を開発しつつある。この試みは部分的ではあるが成功しつつあり、最新の論文ではその成果について触れている。ただし、これも本当の意味での媒介変数を伴なうグラブナー基底の標準形にはほど遠く、更なる理論の構築などが必要となるであろう。 フルCGBの理論については一般の場合にはほぼ完成し、その研究成果の発表を残すのみとなっている。ただし、特殊な場合についてのフルCGBについてはまだ研究の余地を残している。
|