研究概要 |
本研究では,DNA計算における算術演算や論理演算を実行するための基本的なデータ構造の提案とともに,このデータ構造を用いた様々な基本演算に対して効率のよいアルゴリズムの提案を行っている.平成17年度に関しては,以下のような成果を得た. 1.効率よく準備可能なデータ構造と,基本演算を実行する効率のよいアルゴリズムの提案 DNAを用いて値を格納するためのデータ構造として,mビットで表されるn個の2進数を格納するデータ構造の提案を行った.このデータ構造を表す一本鎖DNAを準備する手段として,定数個のDNAを用いて0(log n+log m)ステップで実行できる手順の提案行い,また,乗算,除算といった基本的な演算に対して,提案データ構造を用いた効率のよいDNA計算アルゴリズムの提案も行った.加えて,既存のデータ構造と,提案データ構造を互いに変換するアルゴリズムの提案も行い,これらのデータ構造が効率よく変換可能であることを示した. 2.1台の計算機で動作するDNA計算シミュレータの開発 DNA計算における基本的な生化学的操作をソフトウェアとして実装し,1台の計算機上でDNA計算のシミュレーションを実行するシステムの開発を行った.また,このシミュレータ上で既存の提案アルゴリズムに関して効率の検証を行い,提案アルゴリズムが正しく動作することを示した.このシミュレータでは,アルゴリズムの効率を表す評価尺度として,アルゴリズムの実行ステップ数,必要とするDNAの量等を検証可能である.
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