研究概要 |
本研究の目標は,単純パターンの集合を用いて複雑パターンを生成するプロセスを計算問題として形式的に定義し,アルゴリズム論及び計算量理論的な観点から議論を行い,本問題が本質的に有する計算時間限界の解明と品質・性能保証された近似アルゴリズムの開発を行うことである.多くの場合に感覚的に議論されていた図形描画を,数学的・情報学的に議論することにより作業効率を計る尺度を明確にし,効率の良いアルゴリズム開発を目指す.本年度の検討事項とその研究成果は以下である. 1.線画図形における複雑パターンを単純パターンにより生成する問題は,与えられた単純パターンを1つの頂点として,隣接する単純パターン間の関係を辺として無向グラフで表し,どの順番で生成するかという関係を辺の方向付けで表すことにより,グラフ有向化の問題として形式化できる.また,平面線画図形を考えており,隣接する単純パターンの数はグラフの出次数(または入次数)の制約となる.本年度は,最大出次数を最小化するグラフ有向化問題として定式化し,本問題が一般の場合にはNP困難となることを示した.また,複雑パターンが木グラフとして表される場合には多項式時間アルゴリズムが存在することを示した.これらの結果は,コンピュテーション研究会及びCATS2006において公表を行った. 2.単位長垂直線分と単位長水平線分が連結したL型の単純パターンにより,水平線分と垂直線分からなる線画複雑パターンを生成する際の手間数を最小化する問題を考えた.実現可能性(または不可能性)の判定は多項式時間で可能であるが,手間数を最小化する問題を考えるとNP困難となることを示した.ただし,本研究成果については未公表であり,来年度の課題である.
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