研究概要 |
本研究では,XML文書に関するさまざまな構文制約(ガイドライン)を記述するための言語SGSLを設計し,与えられたSML文書がSGSLで書かれたガイドラインに適合するかどうか検証するソフトウェアを実装した.SGSLは,XML文書中の要素を特定するための言語であるXPath 1.0に,全称および存在限量子を加えた簡明な言語である.アクセシビリティに関するガイドラインであるWCAG 1.0に関して既存の適合性検証ツールが行っている検証内容のほとんどは,SGSLを使って記述可能であった. 提案言語の有用性を確認するため,いくつかの適用実験を行った.まず,既存の調査報告と同様の,実在の多数のウェブページ(約3,000件)に対するアクセシビリティ検証を行い,実用上の不具合がないことを確認した.次に,さまざまなXML文書型への適用可能性を確認するため,2次元画像記述形式であるSVG 1.0,および財務諸表記述形式であるXBRLに対し,構文制約の記述と文書例への適用を行った.その結果,通常の文書型記述言語では表現できない構文制約を簡潔に記述することができ,各構文制約に関する専門の検証ソフトウェアを作成するより少ない労力で適合性検証を行えることを示せた. また,XPathに関連して,XPath式で定義されたアクセス制御ポリシ(XPath式で指定した要素に対するアクセスを禁止する)に対し,XPath式で与えられた問い合わせが違反を起こすかどうかを判定する問題(静的解析によるアクセス制御)について考察した.ポリシと問い合わせを木オートマトンでモデル化した場合、この問題が決定可能であること,および,一般の場合は指数時間完全であるがAND意味論という意味論の下では多項式時間可解であることを示した.
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