本研究では、組み合わせ最適化問題やゲーム木探索などにみられる、木状の依存関係を持つ非定型問題に対象を絞り、計算途中でも構成の変更が可能な分散計算環境を設計、構築し、自然な耐故障性を実現することを一つの目的としている。また、ゲーム木探索を例題として実問題への適用性を評価し、モデルの記述能力や探索効率を高めるための付加要素の導入方法などの検討、評価を行うことを二つ目の目的としている。 本年度の研究成果は、当初の研究計画通り、このような目的を達成するようなプログラムモデルを検討し、そのモデル上でのプログラム記述法の検討、実装方法の検討を行い、初年度設備費によって購入した比較的小規模な計算クラスタを用いて試験実装を行った。結果、このようなプログラムモデルで耐故障性のある計算環境が実現可能であることが示された。また、比較的小規模な実問題アプリケーションであるルービックキューブの求解問題に対して本研究を適用し、評価を行った。結果、本プログラムモデルが実問題を記述するのに十分な記述能力を備えていることが示され、また耐故障性を実現するための再実行に起因するオーバーヘッドは比較的軽微であり、試験実装の段階でも実行効率は比較的良好であることがわかった。さらに、再利用する部分計算の記憶リソースへの分配方法の考察や、負担分散の必要性、探索順序のコントロールの必要など、現実的な問題が持つさまざまな付加的課題を把握することができ、今後の本実装、及び本格的な応用問題への適用に際しての有用な知見が得られた。 これらの研究成果は、平成18年3月の第58回情報処理学会・プログラミング研究会において発表を行う。
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