研究概要 |
本研究の目的は,短時間グリッド計算のための計算資源管理手法を開発し,計算グリッドによる外科手術の支援を世界に先駆けて実現することである.平成18年度は,前年度までに開発を終えている計算資源管理手法を基に,数十秒以下の応答時間を要求する実用的な医用画像処理ソフトウェアを計算グリッド上に開発・評価し,その実現可能性を実環境上で示した. 具体的には,標準メッセージ通信仕様MPI(Message Passing Interface)を用いた並列計算により,外科手術のための2次元/3次元剛体位置合わせを高速化した.評価では,グリッド上の計算資源(CPU100個)を用い,術中用途に耐えうる20秒弱程度の応答時間を実現した.これまでによく用いられてきたグリッドミドルウェアGlobusおよびMPIの実装MPICH-G2を組み合わせた従来のグリッド環境では,応答時間が100秒強であったが,プログラム起動時間の短いMPICH-VPGを用いることにより40秒弱,さらにGlobusと互換性のある提案手法により資源選択処理を高速化し,20秒弱に削減できた. 2次元/3次元剛体位置合わせは,外科手術における基盤技術として注目されつつある.例えば,手術の進行状況を術前計画に基づいてリアルタイムに検証することにより,ロボットによる外科手術を実現でき,手術の正確さや安全性の向上に寄与する.したがって,数十秒以下の応答時間に対処できる提案手法は,これまで単一大規模計算の高速化を対象としてきたグリッドの適用範囲を広げることができ,グリッドの新しい応用分野を開拓できたと考える.
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