多くの遊休状態にある計算機資源を有効活用し、仮想的に大規模な計算機環境を構築する技術が注目を集めている。しかし、資源を提供せずにシステムを利用するだけのユーザが原因で、それらが持つ潜在的な性能を発揮できないという問題がある。本研究課題の目的は、ユーザの計算機資源の提供を促すインセンティブ手法を確立し、その手法を実現するソフトウェアを実際の計算機環境上に実装することにある。提案ソフトウェアをミドルウェアとして実現し、計算機資源の提供ポリシーに応じた共有資源へのアクセスを柔軟に制御する仕組みを提供する。 本研究課題は現在も継続中であるが、これまでに次のような成果を得ている。現在、資源を提供しないユーザに対して、分散システム上のキャッシュの利用やシステム情報(ルーティング情報や資源の配置情報など)の取得を制限するといったアプローチで研究を進めている。具体的には、資源を提供しないユーザにはキャッシュを利用できないようにする仕組みを導入することである。分散環境において、キャッシュを利用した場合としない場合とではシステムの性能差は明らであり、キャッシュを利用できないユーザは、レスポンスタイムの増加やスループットの減少といった大きなペナルティが課せられることになる。このように、共有資源そのものにペナルティを課すのではなく、共有資源を効率的に利用するための技術に着目し、それら技術に関してペナルティを課すことで、効果的なインセンティブ手法の確立を目指している。
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