研究概要 |
2005年度は,2006年度に向けた基礎検討として、通信距離がノード毎に異なるが各々の通信距離は時間的に変動しないという条件のマルチホップ無線網で,最短経路ルーティングプロトコルの検討を行った。一般のマルチホップ無線網では,通信距離が全ノードで同一という条件を設定するが,通信距離がノード毎に異なる場合には,網には片方向リンクが多く発生するため,従来と異なる原理のルーティングプロトコルが必要である. 従来提案されている代表的なルーティングプロトコルの手法は主に2種類ある。第一は送信元ノードから宛先ノードに向かって経路探索パケットをフラッディングして経路(往路)を構築した後、復路を同じリンクを用いて設定する手法である.片方向リンクを含む網では接続性が大幅に劣化する.第二は,第一の手法と同じ原理で往路を構築した後,宛先ノードから送信元ノードに向かって別の経路探索パケットをフラッディングすることにより復路を構築するものである.第二の手法は第一の手法と比較し,接続性を大幅に高められるが,経路構築で発生する制御パケット量が第一の手法の約2倍となり,ノードの密度の高い網では膨大な量の制御パケットが発生することが問題になる。 これらの問題を克服するため,本研究では,第二の手法をベースとして,往路・復路の経路構築の際のフラッディングの実行範囲を限定することで,経路構築性能を維持しながら制御パケット量を大幅に低減する手法を新たに提案した.シミュレーションの結果,提案手法は、第一の手法と比較して経路構築の成功確率を最大約4倍とし,第二の手法と比べ発生する制御パケット量を約50%削減することを明らかにした。 2006年度は2005年度の提案手法に基づいて,各ノードの無線リンクの伝送速度と通信距離が時間的に変動する条件を設定し,この条件で動作する新たな負荷分散ルーティングプロトコルを考案・評価する予定である.
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