平成17年度はバーチャル天文台(VO)に対応したデータサービス(SkyNode)を構築するためのツールキット(SkyNode Toolkit)の作成と、バーチャル天文台より取得したデータを高速で処理するためのグリッド解析環境の構築を行った。SkyNode Toolkitは既存のデータベースを簡単にVO対応化するためのソフトウエアシステムであり、 http://jvo.nao.ac.jp/download/skynode-toolkitにおいて一般公開されている。国内においては、国立天文台や宇宙航空研究開発機構、北海道大学の天文データベース管理者等が利用を開始、あるいは検討している。海外においては、フランスや英国、台湾のVOプロジェクトに対してこのソフトウエアの提供を行い、利用が検討されている。グリッド解析環境は、Webサービスをベースに構築し、今回はすべて独自コードにより開発した。CPUなどの利用率の管理を行うためにMDS(Monitoring & Discovery System)の開発を行った。Grid解析システムを構成する各解析サーバは、ジョブの実行数やロード情報を逐次MDSサーバに対して報告することにより、Grid全体におけるCPU負荷の分布がMDSサーバにより管理されている。グリッド環境を利用するクライアントは、MDSサーバに対してサービスの要求を行い、CPU負荷が低いサーバのアクセス先を取得することができる。ジョブの実行は一般に長時間に及ぶので、同期型のサービス呼び出しインターフェイスに加え、非同期型のインターフェイスも用意されている。非同期型の場合はジョブの終了をMDSサーバに報告するようにし、クライアントからのポーリングをMDSサーバに集中させるようにした。クライアントに直接ジョブの終了を報告する方式も考えられたが、クライアント側でWebサービスを立ち上げる必要が生じるため、その方式はとらなかった。本年度開発したシステムを、すばる望遠鏡のデータ解析システムとしてすでに利用を開始している。遠方の明るい活動銀河核であるQSOの写っているすばる望遠鏡による画像を本グリッドシステムにより解析し、これまで研究の行われていなかった赤方偏移が1.5を超える40個にものぼるQSOについて、それに付随した銀河の探査を行い、遠方のQSOほど周辺に銀河が多数存在する兆候が認められている。
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