研究概要 |
(1)トーナメント方式の音像軌道選択による頭部伝達関数の個人化に関する検討 我々が従来提案してきた方式をさらに高精度化することを目指し実験を行いその結果を解析した.その結果,選択結果と相関の高い頭部伝達関数のパラメタを抽出し6kHz以上の高い周波数が本人のものと一致することが重要であることが分かった.さらに,この結果により,コーパス内の120名を越える頭部伝達関数をクラスタリングした.この樹状図を用いて,トーナメントを構成することにより,多数の頭部伝達関数の中から効率よく聴覚ディスプレイを個人化できることを確認した.新しい方法は,従来法に比べてトーナメントの母数で4倍,個人化に要する時間は1/5程度である.本方式によって,前後誤りが格段に減少することが示された. (2)頭部伝達関数の特徴量の抽出法の検討 聴覚ディスプレイにおいて,上下方向を制御することは,水平方向の制御よりも困難であるが,近年,人間が上下方向を知覚するために使う手がかりとして,6kHz以上の帯域における特徴的なピークやディップが注目されている.しかし,それらの個人性については,議論が進んでいない.我々は,既に構築済みの頭部伝達に関するコーパス内におけるデータを上下左右方向全域に渡って解析を試みた.また,1-5kHzの低・中域に特徴的に現れるピークについても抽出・検討を行った.まず,特徴的なピークやディップの定性的な位置と変化の傾向をまとめた.次に,それらを空間・周波数軸上でトレースするための手法の検討としてダイナミックプログラミングを用いた.さらに,抽出されたピーク,ディップについて個人性の予備検討を行った.
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