研究概要 |
1.頭部伝達関数の特徴的なピーク,ノッチの特性に関する検証 頭部伝達関数の特徴的なピークやディップは上下方向の音像定位の手がかりとなるといわれている.そこで,これらのピークやディップが見られる周波数位置に関して,その角度変化および個人間のばらつきを系統的に調べた.保有する大規模な頭部伝達関数コーパスを用いて,約130人分のデータを解析した結果,上方30度付近においてディップの個人性が強いことが分かった. 2.上下方向を制御するための頭部伝達関数選択手法の検討 上記1の結果から,複数の頭部伝達関数を用いて上方30度の水平面軌道をまわる音像を模擬し,最適な頭部伝達関数を主観評価で選択させる手法を検討した.選択された頭部伝達関数による上下方向の制御について音像定位実験を行った結果,上下0度の単純な水平面軌道をまわる音像を用いた合わせ込みよりも,上下方向の制御が良好であることが実証された.これは,ディップのばらつきが大きい上方において頭部伝達関数を合わせ込んだ方が,上下方向の定位に効果的であることを示唆する. 3.3次元身体形状モデルによる頭部伝達関数計算ソルバーの開発 頭部伝達関数は,身体形状に強く依存して変形することはよく知られているが,個々の身体形状の変形が頭部伝達関数のどこにどれだけ影響するのかについての系統的検討は十分でなかった.これを推進するために,3次元形状モデルを用いて頭部伝達関数を推定可能な,境界要素法計算ソルバーを構築した.開発したソルバーを用いて,頭部の幅,奥行き,高さなどを変形させたときに頭部伝達関数の変形がどのようにおきるのかについて,予備的検討を行った.
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