研究概要 |
本年度は、昨年の結果に基づき,(1)把握動作の数学的モデル化,(2)把握動作データの類似度計算アルゴリズムの設計,を行った. 握るという動作にともなう圧力とその時間分布は同一人物のものでも,その都度変動し非線形に伸縮する.これに対応した照合を行うには,時間的な伸縮を誤差としないような距離算出法を適用する必要がある.そこで,本システムでは把握動作データの照合アルゴリズムにDPマッチング法を採用した. 今回使用したDPマッチングの定義を以下に示す. 登録把握動作デークA,登録把握動作データBとし,各chからの時系列圧力データは, A ch=a1a2a3…ai…aI B ch=b1b2b3…bj…bI と表される.ai,bjはベクトル表現であり,圧力の強さを示す.特徴パラメータが極端に引き延ばされたり,縮められたりしないための制限を設けた(整合窓条件).d(i,j)はaiとbiベクトル間の局所距離,g(i,j)は格子点(i,j)に至るまでのd(i,j)の部分和である. 認証システム構築するためには,テンプレートデータの作成および,本人か非本人を判断するための閾値(識別閾値)を決定しなければならない.その際,動作的特徴を用いた認証システムであるため,動作への慣れ,変化を考慮する必要がある. オンライン筆跡認証の場合,9週間テンプレートデータを更新しないと,認証制度が約50%低下するという報告がある.また,オンライン筆跡認証,署名者に依存した識別閾値を個別に設けることにより,数%改善できるという報告がある.これより,把握認証システムにおいても個別の識別閾値を設定することが有効であると考えられる. よって,動作的特徴に握るという動作を用いる場合でも,ユーザごとに識別閾値の設定,登録テンプレートデータの更新,およびそれにもとづく識別閾値の更新を行う必要があると結論づけた.
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