研究1年目である本年度は簡単な試作システムの作成と改良を通して、実現可能な技術レベルを見極めるための実験を行ってきた。このシステムは、リビングルームの大画面テレビを応接テーブルの上においてある文具やコップで操作するというシナリオを考え、応接セットのガラステーブルの下方から赤外線CCDカメラによって上に置かれた物体を撮影することで、物理アイコン(ファイコン)の位置を認識するというものである。 そして、さらにこの試作システムを発展させ、物体の連続的な動きを認識する機能を開発中である。現在1つの物体の簡単な動きの認識は可能であるが、認識のスピードが十分でなく、複数の物体の認識は難しいという問題がある。そこで、いままでは赤外線LEDと赤外線CCDカメラを用い、人間には見えない照明をあてるという工夫を行ってきたが、超高感度カラーCCDやデジタルビデオカメラから取り込んだ高解像度な映像を用いることで、白黒画像ではなくカラー画像を用いて、認識の精度向上を図れないか研究を進めている。なお、この部分に関しては、オープンソースの画像処理ライブラリIntel OpenCVを利用している。 家電制御に関しては、コンピュータから家電のリモコンを制御する汎用的な赤外線リモコン制御回路を作成した。これをファイコンの動き認識するソフトウェアから制御できるようにし、全体的なシステムとして統合させることができた。たとえば、DVDプレーヤの再生と停止や音量の調整をファイコンを置く位置によってリモコン制御することが可能である。 ヒューマンインタフェースという視点からは、具体的にどのような家電製品をどのように制御することが有効であるか、机という1つの操作面で複数の機器をどうやって切り替えて操作するか、どのような評価方法が適切かといった問題点があり、さらに研究を進める必要がある。
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