研究概要 |
本研究では実空間描画において仮想空間と実空間との分離感を解消するため,本年度はまず描画素材の取得手法に関して以下の2つのインタフェースを実現した. 1.実空間との身体的なインタラクションを介して色取得と太さ変更を同時に行えるスポイトをメタファとした描画ツールの開発. ツールには色取得対象を照明する白色LEDとCMOSカメラが内蔵され,デバイスの先端に取り付けたスイッチを対象に押し付けることで,インクがスポイトに溜まることをイメージし,カメラ画像を基にした色情報の取得,さらに押し付け時間に比例した線の太さの変更を同時に実時間処理するものである.以上のツールにより描画者はその場で直感的に色変更が可能になるだけでなく,実空間を活発に動き身の回りから色情報を探索するなど実空間への気づきが強まる可能性が示唆された. 2.目の前の風景から直接テクスチャを手を使って切り出すことが可能なインタフェース インタフェースでは視界を撮影するカメラを描画者の装着する頭部搭載ディスプレイに取り付け次の動画像処理を試みた.まずカメラから取得した映像を描画者の風景映像として用いるため,描線と共に仮想空間上に配置した.そしてテクスチャ生成時にはその画像に対して,描画ツールの3次元位置情報を基に,画像中の対応点の算出と,仮想空間上へのポリゴンの作成とマッピングを実時間で行った,本手法により手を使った任意形状のテクスチヤ生成や複数のテクスチャ画像の切り取りを実現した. つぎに,上述のインタフェースによって生成した描線やテクスチャ画像を,描画ツールを用いて直接,把持して移動する手法をあわせて考案実装し,手を使って直接描画表現の修正や書き直し,また複数切り出したテクスチャ同士や実物体とを組み合わせることで3次元的なコラージュを可能にするなど表現の幅を広げることに成功した.
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