研究概要 |
複合現実空間において実と仮想とを統合した描画表現を行うためには仮想空間と実空間との分離感の解消が重要となる.そこで平成17年度は描画者が直接手を使って実空間から描画素材を取得したり,仮想的な描線を手を使って操作可能なインタフェースを構築した.本年度は描画表現を複数人が共同で行うため,これらのインタフェースを実装した共同描画システムの開発とともに,インタフェースの有効性の調査を目的とし,以下の成果を得た. (1)共同描画の実現のため,これまで開発したインタフェースを実装したネットワークシステムを構築した.本システムでは各描画システムに描線のデータベースを生成し,それをP2Pによりリアルタイムに共有しながら仮想空間を生成することで,2人があたかも同じ複合現実空間上で描線を共有するとともに,実空間からの描画素材の取得,描線の操作を2人同時に実現した.さらに本手法により互いが描いた描線をその場で直接掴んで受け渡しや,投げられた描線を掴むことが出来るため,2人が互いの描線の修正を行いあうなどの共同作業の支援だけでなく,描画者同士がその場で遊具を手描きしキャッチボールなどの遊びが可能となり,描画表現に留まらない新しい身体的なコミュニケーション手法としての応用可能性を見出した. (2)描画システムを様々な現場において試すため,一人で持ち運び可能なショルダーバッグ型の描画システムを開発した.このとき幅広い世代の描画者を対象とした身体的な拘束の少ない描線の提示手法として,ハンドヘルド型やプロジェクション型のディスプレイを考案製作し,複合現実空間においてHMDの装着の困難な描画者をも対象とした描画試験を可能とした.そして小学生から高齢者までを対象としたデモンストレーションを実施し,本システムを通じた実空間と仮想空間とを統合した描画表現とその時の身体動作について考察した.
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