本研究では、自らの内部情報として心理モデルを構築し、その状態に基づいて自己の行動戦略決定を行う知的エージェントの開発に取り組んでいる。今回、本研究課題において、このエージェントをWebベースの集団協調学習に応用し、学習者間の学習時間調整の交渉や、アドバイスを必要とする学習者が適切な指導者を選択し、その指導者との間での指導時間調整の交渉を学習者や指導者に代わってエージェントが行うようなシステムの実現に向けて研究を行った。 具体的な研究内容としては、まず、一般的な日程調整問題等で利用されている複数者間の時間調整の手法について、それをエージェント間の交渉によって達成する手法として改良を行った。そして、そのために必要な心的情報および外的情報を分析し、その情報に基づいて心理モデルを構築するようにエージェントの改良を行った。また、学習者間や学習者と指導者間の時間調整のために必要な交渉戦略を洗い出し、それらを心理モデルの各状態に対応付けた。さらに、そのように集団協調学習支援に適応させたエージェントに基づく交渉活動の評価実験を行った。そして、これらの結果について、国際会議で発表を行った。 またその後、今年度の研究結果と国際会議で得た議論・助言を踏まえ、次年度に向けての新たな問題定義を行った。具体的には、適応させる学習課題によって支援の内容に変化を持たせる必要性の検討と、その際のエージェントの戦略にも課題に応じた違いが必要であるかの検討が新たな課題として明らかになった。また、エージェントの交渉結果をどのように評価するか、個々の戦略の妥当性を如何に評価するかについても更なる検討が必要であることが明らかとなった。
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