研究概要 |
遺伝的アルゴリズム(Genetic Algorithm ; GA)は,多峰性の探索空間において大域的に良好な解を発見できる近似解法として注目を集めている.GAによる関数最適化への接近においては,UNDX+MGGが,変数間に強い依存関係をもつ多峰性のベンチマーク関数において良好な性能を示している.UNDX+MGGは,有界な探索空間において,最適解が存在する領域を十分に覆うように初期集団を分布させることができるという前提のもとに,探索効率が高くなるように設計されている.そのため,本前提が成立しない場合においては探索に失敗する可能性が高い.したがって,より広範囲の問題を取り扱うためには,初期集団を適切な領域に適応的に分布させた後に探索を行なう実数値GAの開発が必要であると考えられる. 本研究では,池田らの提唱するUV構造クラス2の関数において,最適解が位置する大谷の領域が非常に狭く,探索領域の境界付近に存在する関数を対象問題として扱う.本関数は,UV構造を克服するための手法として池田らにより提案されたISMでも,初期集団を適切に分布させることが困難であり,最適解を発見することが困難な問題である.本研究では,本問題を解決するため,以下のアルゴリズムを提案した:1)探索空間全体に一様ランダムに初期集団を生成する,2)初期集団にUNDX+MGGを適用し,集団を収束させる.この際,親集団のスナップショットを定期的に保存する.3)ステップ2)で得られた親集団のスナップショットから十分に探索した領域を推定し,推定された領域を除外した新たな探索領域を設定する.4)新たな探索領域に初期集団を生成し,ステップ2)へ戻る.数値実験により,UNDX+MGGおよびISMでは最適解を発見できなかった関数において,提案手法が最適解を発見できることを確認した.
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