超解像画像復元問題においては、焦点ずれによるボケなどの光学的劣化と加法性ノイズの影響とを補償する一般的な画像復元問題における要求に加え、観測画像に比べて解像度を大きく向上させるために、未知数に比べ制約式が不足するunder-determinedな問題となる。さらに今回想定している、光学システムの限界による量子化精度の制限や不可逆圧縮が施された動画からの超解像問題では、多対一写像の逆を推定する必要性がさらに加わるために、広い可能解集合から適切な画像を算出しなくてはならない。 昨年度は適切な解候補の探索に向け、幾つかの画像品位に関わる評価尺度を導入し、可能解集合上でこの評価尺度を最適化する手法を提案している。特に全変動(Total Variation)やJPEG圧縮ノイズ抑圧に用いられていた隣接画素間差分情報の導入における基礎検討を行っていたが、今年度は特性の異なる各種劣化画像への適用に加えて隣接画素間差分情報における水平・垂直・対角方向における重み付け等を検討し、さらにMPEG圧縮動画における検討を行った。この結果、通常の半分程度の量子化ビット(量子化精度は1/8-1/16倍に劣化)割当状況における複数画像を用いた超解像・超精度の同時実現が可能であることを示した。前年度の成果に加え、数値実験の検討結果について国際会議での発表を行っている。
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