本研究は複数の他者(人間orエージェント)との相互作業を通して利用して学習することにより、社会的知能を持つエージェントを構築するための枠組みを設計することを目的としている。社会的エージェントを実現するには、(1)ユーザの特徴を認識、(2)各ユーザとの相互作用から類似点の把握、(3)各状況を考慮したフィルタリングによる適切な類似性の計算、(4)類似性の影響に応じた仮想的学習、(5)適切な行為出力の決定、(6)学習の結果の評価、の6つのステップを必要とする。このように社会的知能をもつエージェントの実現のためには解決すべき多くの技術的課題があるが、本研究では、実環境で自律的に動くシステムを想定し(2)(3)(4)の3つの機能の実現に重点をおいて研究を行った。その内容は、 1.社会的学習を行うために、ユーザとのインタラクションを利用するための設計技術 (具体的には各ユーザとの相互作用の情報化と情報フィルタリング技術) 2.ユーザとのインタラクションを使った社会的機械学習技術 (具体的には、強化学習または進化的学習を使った社会的学習技術の開発) の2つである。 本年度は、主にユーザとのインタラクションを使った社会的機械学習技術に注力し、強化学習を用いた社会的学習アルゴリズムMULA-Qの提案とその検証を行なった。また、クラシファイアシステムを用いた社会的学習システムを実装したペットロボットを用いて、実際にユーザとのインタラクション実験によりその効果を検証した。これにより、複数ユーザとのインタラクションを用いた学習の社会的効果を示し、さらに副次的効果として学習の高速化を検証することができた。
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