頭部近傍の高臨場感音場再現について、圧電素子による小型音源デバイスを組み合わせた計測用音源を作成し、評価を行った。本年度、得られた成果は次の3点である。1)小型音源の作成および特性の評価、2)頭部近傍での音響計測および解析3)および計測した信号のインターネットを通じた公開、である。 小型音源(正十二面体)は、CADと3次元プリンタを用いてABS樹脂製のフレームを作成し、このフレームに圧電素子を設置することにより計測用音源を作成した。これにより、頭部近傍の音響計測において、従来用いていた放電現象を利用した音源と比較して、形状の面や、安全性、安定性の面で、高性能な音源を利用することが可能となった。ただし、この音源の特性は、2[kHz]以下の低域および7[kHz]付近での特性が他の周波数帯域と比較して悪いため、これらを信号処理による補正、または別の音源デバイスの利用などによる改善などを行っていくことが必要である。 作成した音源を用いて、頭部近傍の音響特性を表わす頭部伝達関数(Head-Related Transfer Function)を計測し、客観評価および主観評価により評価を行った。その結果、小型音源を用いることの効果が得られたことが確認できたが、より詳細な評価実験を今後行う必要がある。また、計測したHRTFの一部を、インターネット上で公開した。近接音場でのHRTFの公開データベースとしては世界初であると言える。
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