研究概要 |
近年の微小腫瘍の「診断」技術の飛躍的な進歩に伴い,ミリ単位の微小ながんの早期発見が可能となり,その「治療」手法もより低侵襲な内視鏡手術が望まれるようになった.しかしながら,微小腫瘍の切除を視野範囲の狭い内視鏡の映像を見ながら行うには限界がある.また,臓器表面より少しでも深部にある微小腫瘍については肉眼的に病変部位を確定することができないため識別困難であり,病変部位の実位置を精確に識別できる新規の手術システムの開発が強く求められている.これらの問題を解決するために,拡張現実感表示技術を応用した手術ナビゲーションシステムに関する研究が盛んに行われているが,臓器内に存在する腫瘍の位置は術中に患者の呼吸や心臓の鼓動等によって常に変動しているため,単純に術前に計測された腫瘍形状を合成するのではなく,その位置をなんらかの方法で実時間計測する必要がある.そこで,研究代表者はこれまでの研究で「術中変形を伴う臓器内腫瘍位置を実時間で内視鏡画像上へ合成する技術」を最終目標とし,臨床応用するという観点から,術中変形を伴う臓器内腫瘍位置の実時間内視鏡画像合成システムを構築した.しかしながら,実際に画像合成対象となる永久磁石は術前に腫瘍近傍に留置されているために,2つの異なる永久磁石が同じ磁気式センサの計測範囲内に存在するという環境下で,どのようにして3次元位置を計測するのかという問題が残る.そこで平成17年度は,ある位置に永久磁石が置かれた時にセンサで計測される理論的な磁場ベクトルの大きさを算出し,その値がある閾値以下になる領域まで腫瘍近傍に留置された画像合成対象となる永久磁石を磁気センサの計測範囲から遠ざけ,近似的にセンサの計測範囲内に存在しない状況を作ることで「磁石が埋め込まれている状態でのキャリブレーションと画像合成」を実現する方法を提案し,その有効性をin vivo実験を通じて確認した.
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