研究概要 |
近年,低侵襲外科手術治療の一つである内視鏡外科手術において,医師の負担を減らし,より精確な手術を実現できるように手術支援ロボットや手術ナビゲーションシステムに関する研究が国内外間わず盛んに行われている.研究代表者はこれまでの研究で,術中変形を伴う臓器内腫瘍位置の実時間内視鏡画像合成システムを構築した.これらの研究では,ロボットの制御やナビゲーション用の画像合成を実現するために患者体内へ挿入された手術器具の先端位置を術中にロバストにトラッキングする方法が重要となる.トラッキング方法としては,臨床応用するという観点から,一般的に特別な装置を必要としないビジュアルトラッキング法が使用される.しかしながら,内視鏡は一般的なカメラとは異なり,主軸と光源の方向が一致していること,さらには内視鏡と物体との距離が近距離になるため,従来の色マーカを使用するアブローチではハレーションが起こり間題となる. そこで,平成18年度はこの内祝鏡の光学的特性に着目し,手術器具追跡用のマーカとして従来の色マーカに代わり,光学式3次元位置計測装置に使用されている赤外線反射マーカを使用したロバストなビジュアルトラッキング法を提案した.このマーカはプラスチック製の球の周辺に反射材が貼られており,入射した光と同じ方向に射出するという性質を持つため,内祝鏡で撮影された画像を輝度値に着目して単純に二値化するだけで,容易にマーカ部の抽出が可能となる.検証実験を通じて,従来の色マーカを使用するアプローチと比較してより安定にトラッキングが可能であることを確認し,さらに平成17年度までの研究で開発した「ダイレクト内視鏡キャリブレーション」におけるサンプリング法へ応用することで画像合成精度が向上することも確認した.
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