昨年度、「聞き取り易さ」を指標とした聴覚実験を行った.本年度は、「聞き心地」および「雑音の耳障り感」を指標とした聴覚実験を行いフィルタリング処理の性能評価を行った.実験試料として、音量一定の白色雑音を加えた音量の異なる7種類の音声をCSNNRFで処理したもの、さらに、処理結果を一定の聴き易い音量に増幅させたものを用意した.上記の処理結果を、処理前の音声、およびローパスフィルタ、カルマンフィルタの処理結果と比較した.聴覚実験は、対比較実験を行い、Thurstoneの比較判断の法則に基づいて、各フィルタリング処理した音声および未処理の音声の聴き心地、雑音の耳障り感を距離尺度化した。実験の結果、「聞き心地」は、入力信号のSN比が高くない時(0.8〜5.8dB)、CSNNRFによる雑音除去処理は聴き心地を有意に改善した(p<0.05)。CSNNRFはカルマンフィルタより聴き心地が良かったが(p<0.05)、ローパスフィルタが最も聴き心地の良い結果となった。「雑音尾の耳障り感」は、CSNNRFは雑音の耳障り感を有意に改善した(p<0.05)。カルマンフィルタより有意に勝る結果が得られたが(p<0.05)、ローパスフィルタに及ばなかった。ローパスフィルタに比べて高周波数成分の雑音が残ること、雑音の大きさが音声のパワーに応じて変化することが原因と考えられる。
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