研究概要 |
平成18年度は新たな試みとして,2つのオープンフィールドのそれぞれにラット1匹とロボット1台を放ち,一方のオープンフィールドにおけるラットの移動を他方のフィールドのロボットが再現する実験システムを構築した.従来の実験システムでは,ロボットの行動はあらかじめ組み込まれたシーケンステーブルにもとづいて生成されていたが,新たに開発した実験システムにおいては,ロボットの行動はラットの行動をそのまま再現したものとなる.よってこのシステムを使用することで,ロボットがラットらしい行動をとった場合と,シーケンシャルな無機質な行動をとった場合のラットの反応を比較することが可能となる.この実験は,行動の質とインタラクションの関係を調査する新たなアプローチとなると期待され,今後,本研究において重点的に取り組むべき課題であると考えている.また平成18年度は,新たに近交系と呼ばれるラットを導入し,実験を行った.近交系ラットとは,近親交配によって作り出された遺伝的に強く統制を受けたラットであり,系統内における個体差が非常に小さいことから,医学領域において多用されている.また,近年,ナショナルバイオリソースプロジェクトにおいて,300系統におよぶ近交系の収集とデータベース化が進められており,各系統が持つ特色が定量的なデータとして利用可能になりつつある.今後本研究を進めるうえで,近交系ラットの導入は有効な手段であると考えられ,平成18年度は近交ラットとロボットとのインタラクションの可能性についての調査に着手した.
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