研究概要 |
本研究の目的は分光情報と光反射解析に基づいた人間の色覚異常の視覚系モデル構築である.本年度はまず健常者の視覚系のモデル化を試みた.まずデジタルカメラから得られた画像情報から物体表面の分光反射率を推定する方法を開発し,これに基づいて視覚モデルに与える色信号情報を分光的に獲得した.しかし,視覚系モデルに与える全ての色信号を解析するためには,シーン内の物体表面上の全ての座標において分光反射率を知る必要がある.この分光反射率データは膨大であるため記憶容量の削減は重要な課題となった. そこで本年度は,物体表面上の分光反射率データを統計的に解析し,品質を落とさずに大幅に分光データを圧縮するアルゴリズムを開発した.ここでは実際の物体表面から推定した分光反射率を統計的に解析した.このとき抽出した主成分ベクトルを基底関数に用いれば,全ての分光反射率を効率よく表現できる[Vrhel et al., 1994].本研究ではこの線形モデルを用いて分光画像データの大幅な圧縮を行い,また画像品質の劣化を防止した.さらに3次元光反射モデルに光源情報(分光分布),物体表面特性(分光反射率),視覚モデル(等色関数)を組み込んでシーン内の物体を3次元コンピュータグラフィックスで映像化した. ここでは美術絵画を対象に健常者の視覚系が受ける色刺激を推定した.そして分光光度計で対象物体の分光反射率を直接計測し,これを推定値と比較した.この色刺激の比較は,CIE-L^*a^*b^*空間上で色差を調べた.この比較実験により分光情報を圧縮しても実用上色再現精度が十分に保てることを示した.本研究により通常のRGBカラー情報とほぼ同じ容量で実用的な分光画像情報を記録できるようになった.この研究成果はIEEE Southwest Symposium on Image Analysis and Interpretation (SSIAI)2006で発表した.
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