研究概要 |
本年度は,色覚異常モデルを3次元光反射モデルに組み込み,視覚系が外部環境光からどのような影響を受けるのかを調べた.人間の視覚系は,物体からの直接的な反射光だけでなく照明環境からの影響も受けている.これは異なる照明環境でも人間は,物体の色をある程度正確に認識できるといった視覚の色恒常性からもいえる.このように色覚異常のモデル化にはこういったシーン内の照明環境の情報が必要であり,現在構築している色覚異常視覚モデルに環境照明からの影響を組み込む必要があると考えられる. 本研究では色覚異常の視覚モデルを分光的にモデル化しているため,環境照明の光源の空間分布情報と共に分光分布も必要となる.これまで環境光の分光的な情報を推定する方法は提案されておらず,視覚系が位置するシーン内の分光的な環境光分布を推定する手法の開発が必要となる.また,コンピュータビジョンの分野では有限個の光源を仮定することが多かったため無数に分布する光源情報を知る方法を検討しなければならない.そのため自然環境において全方位に存在する光源の空間分布と分光分布を同時に知ることが必要である.そこで本研究では全方位計測系を用いた環境光源の空間分布と分光分布を獲得する手法を提案した.計測系はディジタルカメラと鏡面球からなり,鏡面球に映り込んだ周囲環境の像をカメラで撮影し,その画像から全方位の光源分光分布を得る.本手法の特徴は,鏡面球に映り込んだ像から全方位の分光的な照明情報が得られる事である.これにより任意のシーン中に存在する全方位の光源の分光分布を計測する事ができるようになった.この研究成果はThe Journal of Imaging Science and Technologyで発表した.
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