研究概要 |
聴覚による移動物体の追跡を行うためには音源方向と音源距離を求める必要がある.これらの値を推定する方法について検討を行い,1つの音の提示に対して移動ロボットを動かすことで2カ所の異なるマイク位置で音のサンプリングを行う方法を採用した.具体的には音の発生を認識した場合,移動ロボットをある角度だけ回転させることによって音源に対するマイクの配置を変更し,2つの異なる場所における音情報の獲得を行う.このようにして獲得した2種類の音データから音源位置の推定を行い,音源位置から音源方向と音源までの距離を推定することが可能となる.この方法を実際にプログラムし移動ロボットに搭載し実験を行ったが,定位精度がかなり悪い結果となった.原因は,現在のシステムでは音のサンプリング周波数には48kHzという高めの値を使用しているが,この程度の周波数では左右端方向での方向推定の精度が約15度となってしまうことであった.この問題を解決するために音データの周波数を10倍にリサンプリングし,その結果得られたデータを用いて音源方向の推定を行うこととした.この手法を用いたシステムで移動ロボットと音源間の距離は1m〜4mとして実験したところ,音源方向に関しては誤差が5度程度,音源までの距離に関しては誤差20%となった.この程度の誤差であれば移動物体の追跡は十分行えると考えられる.また,これまでの追跡システムでは移動ロボットの前方からの音源しか追跡できなかったが,音源位置から音源方向を推定する手法の変更を行ったことにより,追跡システムは360度からの音源に対して追跡可能となった.
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