犯罪に関わる映像が被疑者の所有するカメラで撮影されたものであるか否かを特定できる従来の撮影カメラ個体識別法は、その原理と手法が明確で識別精度が高いものの、明確な特徴画素が出現しない撮像素子では識別できない。そこで適用範囲の拡大を目的として、特徴画素以外の大多数の正常画素における暗電流値などの電気特性の僅かなばらつきに着目した識別法について検討した。 同一機種のCCD撮像素子3個を用いて、個体ごとの固定パターン雑音の類似性に関する定量的評価方法について検討を行った。検討に用いる固定パターン雑音の試料は、撮像素子各々のブランク映像出力をコンピュータ上でフレーム積算処理して、取得した。この測定は室温にて行い、異なる日に4回ずつ実施した。暗電流が平均値より有意に大きい少数の特徴画素の座標には、個体ごとの固有性と出現の再現性が確認された。特徴画素を含まない領域での雑音パターンの類似性を定量評価するために、観測された固定パターン雑音の平均値と分散を規格化した後にパターン間の画素値の差分値を統計処理して、同一個体で撮影された映像か否かを弁別できるか検討した。パターンを小領域に分割し、対応する領域ごとに比較した結果を統合することによって弁別できる場合もあったが、試料データの組み合わせによっては誤判別することもあった。同一個体内でのパターンの微少変動に頑健な定量化方法の開発が、今後の課題として挙げられた。
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