研究概要 |
本年度は,特定ユーザの嗜好を反映したデータからそのユーザの嗜好を獲得・模倣する数理モデルの構築の一環として,あいまいさを伴う概念間の構造を扱うために,ラフ集合にオブジェクト指向を導入したオブジェクト指向ラフ集合モデルの構築を行った.構築したオブジェクト指向ラフ集合モデルでは,オブジェクト指向プログラミング言語で用いられるクラスおよびその階層構造を表す以下の2種類の関係: ●クラス間の全体/部分の関係(has-a関係) ●クラス間の抽象/具象の関係(is-a関係) を導入することで,従来のラフ集合モデルを以下のように拡張している: 1.従来のラフ集合モデルで扱えるオブジェクトは同一の種類(クラス)のオブジェクトであった事に対し,オブジェクト指向ラフ集合では,複数種のオブジェクトを同じ枠組みで扱うことが可能である. 2.クラス間の上述の関係に基づいて,オブジェクト間の階層構造を明示することにより,オブジェクトの構造を考慮した近似が可能となる.これは,以下に述べる嗜好学習の数理モデルにおいて,価値判断のポイントとなる属性を,ラフ集合を用いて表現することの理論的基礎を与える. また,ラフ集合間に順序関係を導入する基礎研究の一環として,ラフ集合を用いた4値論理の意味論に関する研究も行った. 更に,来年度に向けて,オブジェクト指向ラフ集合モデルを用い,価値判断のポイントとなる属性をラフ集合,嗜好をラフ集合間の選好順序として表現する嗜好学習の数理モデルの構築,およびオブジェクト指向ラフ集合モデルを用いた嗜好学習システムの計算機上での試作を並行して実施している.
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