本研究は、脳によって分散処理された情報がいかにして統合され、全体として一貫した機能が実現されるかを理論によるモデル化と回路化による構成的アプローチの二本柱によって明らかにすることを目指した研究である。 理論によるモデル化においては、パルスニューラルネットワークによる連想記憶モデルの再検討を行った。連想記憶モデルは脳の機能において記憶を担当するモジュールであり、今後の「統合」機能のモデル化においてはその構成要素となる重要なモデルである。 また、その連想記憶モデルにおけるカオス的パターン遷移現象の解析を行った。これは、モデルに格納された複数のパターンを取り出す際、取り出されるパターンがカオス的に遷移する現象のことであるが、この現象を通じ、「機能"間"の統合」だけではなく「機能"内"の統合」も重要性を持つことが分かった。つまり、どのパターンが取り出されるかについては「機能内の統合」が、そしてそのパターンに対して外部モジュールがどう働くかは「機能間の統合」が関わって来るわけであり、その解析が次年度の課題である。 回路化については、これまで扱って来たPCIボードHwModule(東京農工大学 関根研究室開発)の仕様変更への対応を行った。このボード上のFPGAに対するニューラルネットワーク回路は既に提案しているが、新仕様ボードに対する回路モデルの改良を次年度は検討してゆく。
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