研究概要 |
本研究では,歯状回における神経細胞の置換を考慮した海馬システムのモデル化を行い神経細胞の置換が記憶形成に果たす役割を明らかにすることを目的としている.本年度は以下の研究を行った. 1.海馬に関する最新の知見の調査 主に,詳細な研究が多く行われているげっ歯目を中心に,歯状回顆粒細胞の発生・死滅現象に関する生物学的研究成果の調査を行った.また,米国で開催された第35回神経科学年次大会に出席し海馬全般に関する認知神経科学的研究成果の調査を行った. 2.歯状回の神経細胞置換を導入した海馬システムのプロトタイプモデルの構築 1.で得られた知見を元に,嗅内野,歯状回,CA3からなる比較的小規模な海馬システムのプロトタイプモデルを構築した.プロトタイプの構築にあたっては,これら各領域のニューロン数,活動レベル,結合の度合い,歯状回顆粒細胞の置換率などを考慮に入れた.現在は,神経細胞の置換率によって,海馬システムのパターン分離能力や追加学習能力などにどのような違いが生じるかを計算機シミュレーションによって調査している. 3.STDPとパターンコンプリーションによる記憶の変容に関する研究 海馬CA3で行われていると考えられているパータンコンプーリション機能とスパイクタイミング依存性シナプス可塑性(STDP)の相互作用によって,情報の出現頻度に応じて記憶が形成されたり逆に消去されたりする可能性があることなどを計算機シミュレーションによって明らかにした.
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